形意拳の劉奇蘭は門弟にこう述べたそうです「形意拳は自身の気質を変化させる道である。原初(先天の氣)に戻る為に練るのであって、決して後天血気を求めるものではない。」後天血気とは内家拳では特に忌まれる事柄で、浅はかな知恵、または力任せな暴力、というようなものです。現代でも「血気に逸る」という言葉で表現されると思います。そうではなく、真の武術を求め、正々堂々真っ向から挑み、心の働きを知る、自身を偽る事なく全的になる、その一助となるのが本当の「氣」というものなのです。
前述の「拳意述真」に八卦掌の程庭華が著者の孫録堂にこんな事を言ったと書かれています。「八卦掌とは、もしこの道を会得できたならば、獨り自分だけを善(幸せに)にするだけでなく、同時に天下をも善にすることができるのだ。」(原文は「此道得之於身心可以獨善其身亦可以兼善天下」)自身の気質を変えて心を全的にすれば人生も好転し、それだけではなく周りの人も幸福にできる、そう仰ったという事です。真の武の道とはこのようなものなのではないかと私は思っています。
いつの日か皆様が先天の氣に還れることを願って。
文責 森本弘充
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