STMG 古伝武術の世界|「氣」とは何か、「勁」とは何か
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古伝武術の世界

武術に取り込まれた神秘主義

これらは古代中国の神秘主義的概念です。中国武術にはご存じのようにいろいろな神秘主義の概念が取り入れられています。日本人にも馴染み深い「陰陽五行説」や「太極論」「易経」などです。この”血”については陰陽五行の「五臓」から説明されています。曰く「血は肝の液、肝は木行に属す」。

単純に考えますと現代医学でも肝臓と血液は関係が深いような感じがしますので当たり前のように思ってしまいますが、そうではありません。この事柄は「肝臓という臓器も「肝」というもののうちであり、血液は肝に貯められる」とされていて、実際の臓器の肝臓のみを指しているわけではありません。こういった肝臓や血液を司る「後天の氣」を表す為に「木行肝」と表記したのです。その「木行肝」の力が外部から取り入れた「氣」を身体の隅々にまで運び入れ、結果「火行」として表する強大なエネルギーを生じさせる、という説明をしたいわけです。

つまり、外部(天然自然)から取り入れた氣(先天の氣)を、木行肝の力(後天の氣)で身体に巡らせる(後天の氣と先天の氣を合わせて真氣とする)のは単純な生理現象ではないということを説明していると考えられます。

このような神秘主義的な概念はそもそもが後付けなわけですが、人間とは不思議なもので、こういった概念を元に呼吸を調整したり、意識と共に特定の所作を行うと、いろいろな身体的事象を生じさせ、通常とは違う”力”を呼び起こしたりできるのです。そして武術家はその事象を身体の保護や回復、或いは戦闘に生かす為に工夫を加え、それが現代にまで伝承されている「氣」の技術となるかと思います。

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